「宮沢賢治伝」の再検証(二)―<悪女>にされた高瀬露―(7)




「ライスカレー事件」はあったのか? 賢治と高瀬露のかかわりを語り、あるいは書くとき必ずこのライスカレー事件のことが出てくる。 不思議なことにこの出来事のあった年月日時は不明である。いつごろと漠然とした程度の時もわからない。 また、この物語りの主人公は、賢治と高瀬露である。それに数人の賢治を訪ねてきた農民たちがいるが、それは誰だかわからない。 戦前から有名になったいた話なのだからあの時いたのは、俺れだぐらい言ってもよさそうだが、とうとう名乗り出なかった。 それに、この事件が事実なら仰天した農民たちとは別に冷静に客観的に一部始終を見ていた人物X氏がいたはずである。 そういう人物がいなければこの話は伝わらなかったはずである。それが誰だかわからない。これも不思議である。 森荘已池氏も、その場にいなかった。あとで詳しく述べるが、この話の最終的情報源は、今のところ高橋慶吾にたどりつき そこで止まってしまうが、それより先はわからない。高橋慶吾は、そこにいたのは自分であるとは言っていない。 あるいは親しい人には、話したかも知れないが、少くとも文献的にも、あるいは誰かの証言という形でも遺っていない。 少し長くなるがこの事件の信憑性の検証のためにまず、森荘已池の『宮沢賢治と三人の女性』の中の ライスカレー事件の部分を全文転載する。  (略・こちらの別窓参照) (この章未完)

[上田哲・七尾短期大学「七尾論叢第11号」P72〜P71より・1996年]